ある晩恭一が目にしたのは、軍歌を歌いながら行進する、電信柱の列でした。
ドッテテドッテテ、ドッテテド
でんしんばしらのぐんたいは はやさせかいにたぐいなし
ドッテテドッテテ、ドッテテド
でんしんばしらのぐんたいは きりつせかいにならびなし
…この発想がもう、さすがとしか言いようがありません。
確かに、規則正しく並んだ電信柱はまるで兵隊だ
夜に行進してたら、どんなに不気味で楽しいだろう
電信柱の兵隊が口ずさむ歌と、軽快なステップ。
そして、黄色い顔のおじいさん。
この人は人間なのかな…?いや、かなり怪しい。
正体はきっと電気だろうな。違うかな…?
これは恭一が経験した、たった数分の出来事でしょうが、グイグイ話に引き込まれます。
結末はハッと一瞬で、霧のようにスーっと消えてしまったような感じでした。
絵のぼんやり感が夜の幻のようで、なんとも言えない不思議な余韻が残る作品でした。