「ベゴ石」と呼ばれている、たちの良い黒い石が主人公。
いっぺんも怒らないので、周りの石や蚊やにまでからかわれて・・・
でも、この「ベゴ石」の表情を見ていると、なぜか怒りの気持ちなんて
沸いてこないんですよね。そして、ベゴ石の発言は実に穏やかで、とても
心の広い感じを受けました。
そんなベゴ石だからか、からかわれている場面でも、楽しい雰囲気で
読み進めることが出来ました。とにかく、このベゴ石の表情が良いですね。
全体を通してみても、ストーリーと絵がとてもマッチしていて素晴らしく、
自然に絵本の世界へ入っていくことが出来ました。
ずっと目を閉じていたベゴ石でしたが、この絵本で唯一、うっすらと
目を開ける場面があります。見開き2ページに描かれたその場面に、
思わず見入ってしまいました。
「私共は、みんな、自分でできることをしなければなりません。」
自分に置かれた境遇を、ただただひっそりと受け入れ続けたベゴ石。
別れの言葉の中で、からかわれ続けたその場所を「明るい楽しいところ」
と表現していたのにはドキッとしました。もしかしたら本当は、その場所に
ずっといた方が良かったのかも?たとえずっとからかわれ続けたとしても?
そう考えると複雑な心境になりました。
これは、きっとベゴ石にとって、ハッピーエンドなんだと思いたい。
きっと連れて行かれた先でも新たな出会いがあるはずだから。
久しぶりに息子に読み聞かせながら読んだのですが、ところどころ、
からかいのシーンや、苔がむしり取られる場面で笑ったりしながら
聞いていました。
実は最初、「え〜、宮沢賢治の本?」と言っていた息子でしたが、
読み終えてみると、「他の本はないの?」とどうやら宮沢賢治の世界に
引き込まれ始めたようです。
私自身も宮沢賢治の作品をじっくり読んだのは初めてでしたので、
とても新鮮な感覚でした。
これを機に、いろんな作品を読んでみたいと思います。