娘が生後八ヶ月のとき、日本へ出張に行ったママが買ってきた絵本です。なぜこの絵本を選んだのかたずねたところ、「いろいろなお弁当があるので、そうした点が日本的かなと思った」のだそうです。なるほど、確かにヨーロッパの人にとってお弁当といえば、「サンドイッチのようにパンに何かを挟む」くらいしかないですから。
この絵本、絵の方はどこかで見覚えがあると思っていたところ、『ぐりとぐら』の山脇百合子さんが担当なさっています。実はこの『ぐりとぐら』は多くの方の支持を得ている名作であるにもかかわらず、当家の娘にはほとんど見向きもされない存在だったりします。従って、『きょうのおべんとうなんだろな』も、わが家に到着以来ほとんど存在すら忘れ去られたまま、長く本棚に放置されておりました。同時期に来た他の作者による絵本はよく手にすることがあったんですが、絵の雰囲気が娘の趣味に合わなかったのでしょうか。
ところが、本格的な読み聞かせが始まってから一ヶ月ほど経過した二歳二ヶ月の頃、突然毎日のように読むのをせがむようになりました。それこそ数回連続でリクエストし、しばらく別の本を読んだ後、また連続リクエストをするといった入れ込みようでした。「何が突然そんなに娘の心を捉えたのか?」ですが、恐らく、それはまだ十分に言葉を習得しきれていない子供にとってもすんなりと受け止められるシンプルで、分かりやすい文にあるのではないかと思います。実際、娘はリクエストがピークにあった一週間ほどの間に、この絵本の文をところどころ憶えるまでになりました。思わぬ学習効果にビックリした次第です。
絵は『ぐりとぐら』がお気に入りのお子さまなら問題ないと思います。娘にとっては敷居が高いものとなりましたが、いろいろな動物が自分のお弁当を手にする様子に興味を持つようになれたことで、この絵本への扉が開かれた感じです。
ストーリーは単純・明快で、文章も取っつきやすく、小さな子供でもまず知っている動物が登場し、それぞれ好物のお弁当を手にする様は親子の会話のきっかけも提供してくれることでしょう。良くできた絵本だと思います。意外と探すのが難しい、読み聞かせの初期に重宝する一冊ではないでしょうか。