私が小学生だったころ、ベルリンの壁が崩壊した。
遠い国の出来事を連日テレビで報道されるのをただなんとなく見ていた記憶がある。
この絵本は、その「かべ」が崩壊するまでの作者の記憶である。
物心ついたときから絵を描く事が好きだったけど、学校では好きなモチーフの絵は描けなくて、家の中だけで描いていた・・・など。
日本に住んでいる私たちには経験のないこと。
政治家たちへの不満も口にできる。
好きな服を着て、好きな音楽を聴ける。
生まれた時から、ある程度の自由が保証されて育った私には
作者の境遇がどれほど厳しいものだったか・・・
想像しがたい。
ただ、常に心の中で夢を描き続けること。
その執念にも似た想い。
たぶん、今・・・
私にはそれが足りないのかもしれないと自分を省みる。
この絵本には小さい頃からの自身の境遇を淡々と受け止めて生きる
作者の潔さのようなものが感じられて読んでいて息苦しくならない。
おそらく、こういったテーマの場合、暴力模写や、憎しみが充満している場合が多く読んだあとに苦しくなるものが多い気がする。
これは、人にも勧めやすい。
息子のためにも絵本棚の端に置いておこうと思う。
小学生になったら読む日がくるだろう。