2011年度読書感想文全国コンクール小学校高学年課題図書。
『HOW TO STEAL A DOG』が原題。
完全計画、と訳出してあるところがなんともスリリングです。
パパが突然家を出て、ママと弟と一緒に車でみじめな生活をしているジョージナ。
ある日、電柱の張り紙を見て、ある計画を思いつくのです。
それは、飼い犬を盗んで、飼い主が探し始めたところで、
その犬を届けて謝礼金をいただく、というもの。
良心の呵責にさいなまれながらも、綿密に計画を立てるジョージナ。
様々なハードルをくぐりぬけ、完全計画は遂行間近だったのですが、
ジョージナは思いとどまります。
ホームレスのムーキーの言葉は教訓的です。
「うしろに残した跡のほうが、前にのびてる道より大切なときもある」
「もがけばもがくほど、泥沼にはまることもある」
なにより、ムーキーのさりげない行いに教えられるものがあるような気がします。
ジョージナの、子どもらしい素直な心の動きと行動に、
あらためて、子どもを取り囲む環境の大切さを感じました。
ぶっきらぼうだけど、懸命に生きるママの姿も、同世代として切実に感じました。
愛らしい犬、ウィリーの様子が救いで、
明るいテンポでスリリングに展開していますが、
実は社会の暗部を忠実にあぶりだしているようで、
フィクションでしょうが、このような状況の子どもたちは存在するという現実を
目の当たりにしたような読後感でした。