プロとしてはいささか恥ずかしい話だが正直言って、それほど明確な知識や考えがあってこの絵本の購入を決めたわけではない。決定の前に中身に目を通していたら、もしかすると購入不要としていたかも知れない。ところが暫くすると、この絵本を読みたいという利用者が現れた。そして徐々に増え始めた。1カ月後には待ってもらうようになった。日本図書館協会の「選定図書」にも選ばれた。ついに2冊目の購入を決めた。するとまた新しい利用者が現れた。派手さはないが着実に読者を増やしている。とうとう3冊目を購入することにした。絵本がもつ不思議な力が静かに静かに読者を呼び込んでいる。成長がとびきり早い子も、どうも遅いと心配な子も、物覚えのよい子も、なかなか覚えられない子も、思いやりのある子も、思いやりなど忘れそうになっている子も、とにかく一度は手にしてほしい、そんな絵本である。