父親による暴力をテーマにした、ノルウェーの作品。
「話してごらん、だれかに」のサブタイトルで分かるように、
子どもの視点から父親の暴力を描きます。
ボイ少年とママは、パパのご機嫌が気になるのです。
大好きなやさしいパパが、時々狂暴になるからです。
ボイはその正体が、パパの心の中の「怒り鬼」だとわかっているのですが、
なすすべもなく、自分を責めてしまうのですね。
そして、見聞きし体験したことは、誰にも言ってはならないのです。
でも、ボイに救いの手が差し伸べられます。
隣人の犬に全てを話し、手紙を書くことを勧められ、王さまに打ち明けたボイ。
そして王さまが、「君が悪いんじゃない」と言ってくれ、
パパは隔離され、自分の「怒り鬼」のコントロールの仕方を学ぶのです。
「怒り鬼」という視点を置くことで、ボイはパパを愛情をもってとらえることができているのでしょうね。
とても重いテーマを扱っていますが、悲惨な暴力場面はありません。
子どもの自尊心を大切にすることを主眼に描かれているからで、
そのあたりの構成は見事だと思いました。
小学校中学年以上くらいからの、人権学習にも使えると思います。