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絵本ナビ
絵本ナビ 書籍PR号
実体験を絵本に。ララは、作者の陳天璽(ちんてんじ)さんご本人
にじいろのペンダント
税込価格:1,870
『にじいろのペンダント』の主人公・ララは、横浜の中華街で生まれた女の子です。

ララが生まれ育った街には、日本語だけでなく、中国語や他の国の言葉を話す子どもたちがたくさんいました。話す言葉が違っても、みんな同じ子ども同士。幼稚園に通うようになったララにも、お友だちができます。ところが、お友だちは持っているのに、ララは持っていないものがありました。

それは「コクセキ(国籍)」です。
「コクセキ」ってなに? 「ホウセキ」みたいなものかな?
まだ幼かったララは、そんな風に無邪気な想像をしました。だって、仲良しのナナちゃんも「コクセキ」を知らなかったし、「コクセキ」がなくても特に困ることがなかったからです。

ところが、ララが成長するにつれ、「コクセキ」がなくて困ることが増えてきたのです。それはいったいどんなことでしょうか。絵本で描かれたできごとを紹介しましょう。
ある日突然突きつけられる、理不尽な対応
「無国籍」とは、文字通り「国籍」が「無い」状態のことです。無国籍者は、世界で1500万人以上、日本国内にも数百人が存在するそうです。でも日本人の両親がいて、日本国内で生まれ育った人の場合、生活の中で「国籍」の有無を意識する機会は海外旅行に行くときくらいだと思います。

ララは成長するに従い、「コクセキ」をもっていないことで、銀行口座を作ったり、部屋を借りることができなかったりと日常で困ることが増えました。さらに、家族みんなで台湾にいるおじいさんに逢いに行ったときに、衝撃的なことが起きたのです。
ララは台湾の政府がくれたパスポートを持っていたのですが、「ビザ」がないと台湾に入国できないというのです。ビザとは、その国の国民以外の人が入国するために必要な証明書。ララは、台湾の政府から「外国人」として扱われてしまったのです。入国できなかったララは、ひとりで飛行機に乗って日本に戻りました。しかし今度は、日本の入国ゲートで「ビザの期限が切れていて日本に入国できない」と言われてしまったのです!

もし自分だったら、どんな風に感じますか? ぜひララの立ち場になって考えてみてください。
お母さんが教えてくれた「にじいろのペンダント」とは?
「コクセキ」がないことで困難にぶつかりながらも、ララは家族や自分が生まれ育った横浜の街、そこに住んでいる仲間たちの存在を心の支えに、外国の大学に進んでがむしゃらに勉強しました。久しぶりに横浜に戻ると、お母さんが「にじいろのペンダント」の存在を教えてくれました。

「いままであなたが経験したことや、出会った人たちとのつながりをたいせつにしていくと、このペンダントはかがやくの。ララならだいじょうぶ! 自信を持って生きていきなさい。ほんとうの幸せをつかんでね」
これまで生きてきた中で培ってきた知識や経験、そして出会った人たちとの縁が今の自分を形づくっている。それは「コクセキ」とは関係のない、ひとりの人間としての姿でもあります。だからこそ、「コクセキ」がないだけで、幸せを奪われるのはおかしい。その考えに至ったララが決意したこととは?

詳しくは、絵本でじっくり読んでみてください。ララの詳しい生い立ちや「無国籍」になった経緯など、わかりやすい文章できちんと説明されており、漢字にはすべて読みがながふってあるので、小学生から読むことができます。

「無国籍」の一番の問題は、私たちの多くが「“知らない”ということを知らない」という、問題意識の薄さにあります。ララこと作者の陳さんは、あとがきで「絵本を通して無国籍者への理解を深めることで、人として本当に大切なものはなにか、本当の幸せとは何かを、多くの人が知るきっかけになればと思います」と綴っています。

幸せになる権利は、すべての人にある。当たり前のことですが、この絵本はその「当たり前」を実現するためにすべきことが、まだまだ私たちにあることを気づかせてくれる一冊です。
にじいろのペンダント
ボランティア活動から生まれた絵本
「国籍」は、国家と個人を法的に結び付ける絆です。国籍は、生まれた国に基づいて取得する「出生地主義」と、親と同じ国籍を取得する「血統主義」に大きく分けられます。国ごとに違う国籍法があり、それらの矛盾によって無国籍になる人も、逆に複数国籍(二重国籍)になる人もいます。法制度や手続きの不備、戦争などによる国家の崩壊、民族的な差別で国籍をはく奪されるなど、無国籍になる原因はさまざまです。国籍がないことに対する偏見や無理解も多く、国籍を取得しようとしてもさまざまな手続き上の困難にぶつかります。

そんな風に困っている「無国籍者」を支援するために、作者の陳さん(ララさん)はNPO法人「無国籍ネットワーク」を発足させました。陳さんが先生をしている早稲田大学の学生を中心としたボランティアサークルとして「無国籍ネットワークユース(SNY)」も生まれ、そのイベントで陳さんが自分の経験を話したことが出発点となり、「どうしたら無国籍の問題をたくさんの人に知ってもらえるだろう」という試行錯誤から生まれた絵本が『にじいろのペンダント』なのです。

また陳さんと並んで作者となっている由美村嬉々さんも、陳さんに逢ってはじめて、国籍をもたない(もてない)人たちがいること、そしてさまざまな問題を抱えて苦しんでいることを知り、いっしょに絵本の制作に取り組んだそうです。

陳さんやSNYの学生さんたち、そして、クラウドファンディングで支援を寄せた方々や出版社など、たくさんの人がこの絵本を世に出すために力を出し、協力したこと。これこそまさに、「にじいろのペンダント」を輝かせる行動のひとつだと思います。もちろん、このメールを最後まで読んでくださったあなたのペンダントも、にじいろに輝いていることでしょう。絵本を読んで、さらにその輝きを強くしていってもらえたら、幸いです。
See You!
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