「クマのプーさん」を知っている人ならばおなじみ、百町森のしめっ地にすむ、イーヨーがあたらしいうちをもらうおはなしです。
といっても、プーたちの奮闘の裏に、ちょっとしたまちがいがあったというかわいらしいおはなしです。
雪がふっているある日、プーはなにもすることがなかったので、コブタの家へいくことにしました。
白い山道をパタンパタンとふんで出かけたのに、コブタは留守でした。
家に帰ってみると、じぶんのうちにコブタがいるではありませんか。しかも、自分のいちばん上等のいすにこしかけこんで!
散歩中にごきげんな歌を思いついたプーは、コブタに「ふたりでイーヨーのところへいって、ぼくの歌をうたってやろうよ」と提案します。
松林の途切れたところまで来たプーは、イーヨーのために家をたてることを思いつきます。
コブタが松林の反対側に木があるといって、2人でそれを運んでイーヨ―の家をつくります。
一方、クリストファー・ロビンのところへやってきたイーヨー。どんどん降ってくる雪にうもれていきながら、しめっぽく、あわれっぽく、でも威厳をたもちながら、じぶんの家がいつのまにか消えてなくなってしまった話をします。
さて、イーヨ―のうちは、どうなったのでしょうか……?
「はじめてのプーさんシリーズ」は、石井桃子さんの名訳そのままに、一話ごとに楽しめるのがポイント。
言葉の言い回しはやわらかく、古めかしいと感じるところもあるかもしれませんが、全体的にのんびりとあたたかく響きます。
E.H.シェパードの挿絵がふんだんに入り、絵童話のように読むことができます。
キャラクターの「プーさん」しか知らない方には、一度ぜひ手にとってほしいお話の世界です。
もってまわった言い回しのイーヨーと、ちょっぴり間がぬけていて、へんてこなしっぱいをしでかしてしまうプー。
その会話が、いきいきと伝わってきます。
百町森のなかまたちのキャラクターや暮らしぶりが、手にとるように伝わってきますよ。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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