地球上空1万メートル、眼下に広がる青い地球と、ぽつん、と宇宙に浮かぶ月。
印象的な1ページ目をめくると、重力によって落ちてゆく一冊の絵本があって、その向こうに、壮大な海と山の景色が広がります。
落ちてゆく絵本には、1ページ目と同じ、月の浮かぶ宇宙の光景が!
そう、その絵本は、まさに読者が手に持っている一冊なのです。
今読んでいるページが次のページで現れたり──
あるいは逆に、次のページの一部が今読んでいるページのすみに差し込まれていたり──
絵本の中にこの絵本自身がたびたび登場し、読者がページをめくるのに先立って次々と場面展開していく、ふしぎな演出がなされている本作。
まるでぱらぱらマンガのように絵の変化は連続的なのに、その独特な演出によって、舞台がダイナミックに変化していきます。
その動きはあたかも、壮大なスケールの映像作品を見ているよう!
独特な演出。
トリックアートのようにシュールな世界観。
ロケットのなかの宇宙飛行士と交信しているような、ゆっくりとしたテンポの文章。
それらが相まって描かれる、重力のなくなってしまった地球や無重力の宇宙は、ふしぎな浮遊感に満ちていて、ふわふわと、なんだかふしぎな読み心地……。
それによってこの絵本は、ある種の実感をともなって、重力というものの奇妙さ、おもしろさを描き出しているのです。
知ってるようで知らない、この地球上のすべてのものに働く力、『重力』。
さあ、この「読み聞かせができる科学絵本」で、重力のふしぎを知る旅へ!
(堀井拓馬 小説家)
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