「ひみつだからね。これは ほんとうは ぼくだけのひみつなんだけどね。きみには とくべつに おしえてあげるよ」
と男の子。
小屋のまわりをかんぽっくりでポクポク歩くと、あるものが飛び出してきて僕と競争するんだよとか……。
横倒しの太い枝を乗り越えたところで、スピピーって草笛をふくと、へんてこな電車がやってくるとか……。
空想を広げながら道を歩いていく子どもの、わくわくする気持ちが伝わってきます。
ちょっとドキドキ、こわさも感じるくらいの暗がりを魅力的に描く、軽部武宏さん。
黒や藍色の使い方が印象的で、暗がりの中の華やかさを感じられる作家さんです。
そして軽部さんの描く世界の中には、「場所」が大きなポイントみたいです。
一歩踏み超え、ある場所で、誰かにつながる合図を送ると……何かが起こるんです!
“ひみつ”の匂い、“ひみつ”の色。
自然界の向こうから、子どもにむかって手を差しのべてくる何か。
その大いなる何かと交信し、ひとときつながり、手をふって分かれる。それは子どもの特権なのかもしれません。
幻想的なあやしさと、空想世界とこっそり手をつなぐ子どものよろこびが伝わってくる絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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ひみつだからね
これは ほんとうは
ぼくだけのひみつなんだけどね
きみには とくべつに おしえてあげるよ
だれも知らないひみつの場所で、スピピーってくさぶえをふくとね……ガタンゴトン、タヌキの電車がやってくるんだよ!
池のほとりのふしぎなお城とお姫さま、林のおくで昼寝している木のおじいさん、波うちぎわにあらわれる大きな海賊船……。道に落ちているものや些細なできごとを、自分だけのとくべつななにかに変えてしまう、すべての子どもがもっている魔法の力を描きます。
日本絵本賞を2度受賞した著者が、幻想的な景色をぎゅっと詰めこんだ濃密な空想世界。日常を旅するように生きる子どもたちに。
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