デリバリーぶたは、どこへでも食べものを届ける、配達ぶた。
それがね、ちょっとやそっとの「どこでも」じゃないのです。
広い海の上。世界一高い山。
むかしむかしのおじいさんのところや、おひめさまのお城にも!
たとえば海でいつもとれたての魚をたくさん食べている漁師さん。
「でも、きょうは やいた にくが たべたいな。ああ、この ひろい うみの うえで たべたいなぁ。」とつぶやくと……。
「デリバリーぶた! おまちどおさま〜」
空から自転車でキコキコこぎつつ、焼いた肉をお届け!
海上で食べる、焼きたての焼き鳥の美味しそうなことといったら。
串に刺した鶏肉と葱、こんがりした焼き焦げからは、いいにおいが漂ってきそう……。
雪と氷につつまれた、世界一の山頂で「あたたかいものが たべたいよー。」と登山家が口にすると……。
「デリバリーぶた! おまちどおさま〜」
アツアツのラーメンの麺、上品そうな醤油の汁に浮かぶきらきらした脂……。
思わず「わぁ〜!」と声が出ちゃう。
ピンクのサンバイザーがトレードマーク。
途中で、おじいさんにもらった笠をサンバイザーの上にかぶり、デリバリーぶたは自転車を漕いでどこまでも。
病気で寝込む人には、そっと小さな声で「おだいじに」とお粥をお届け。
子どもたちにも身近なクレヨン、クレパスで描いた絵が、加藤休ミさんの手にかかると、本当に湯気や香りが漂ってきそうになるんですから、すごい。
「どれが食べたい?」なんて、親子やきょうだいで妄想するのもきっと楽しいですよね。
わが家の5歳男子は、言葉の響きが気に入ったのか「デリバリーぶた!」と繰り返しつつ「ああ、焼き鳥、また食べたいよー」と絵本を見つめていました。
食べものの絵に胃袋をつかまれ、ときめく気持ちをどうぞ味わってください!
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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