あっちゃんがひとりでお留守番をしているとき、とつぜん鳴り響いた電話。
受話器を取ったあっちゃんは、首をひねりました。
おかしな声をしたその相手は、なんと自分のことを帽子だと名乗るのです。
「もしもし、ぼくは帽子だよ。あっちゃんのお父さんの、青いしましま模様の帽子だよ」
お父さんに置きっぱなしで忘れられてしまったと訴える帽子。
半信半疑で家に帰ってきたお父さんをうかがうと——なんと、たしかに帽子を忘れているではありませんか。
数日後、またもやお父さんに忘れられてしまった帽子から電話が。
「助けてくれ! お父さんに、早く取りに来てくれって……ああー!」
叫び声と共に切れる電話。
そして帽子は、行方知れずとなってしまうのです——
帽子から電話がかかってくるという、摩訶不思議な幕開けではじまる物語。
どうして帽子が電話なんてかけてくるのか?
お父さんだけが知っている、帽子の秘密とはいったいなんなのか?
助けを求めて叫んだ帽子——彼にいったいなにが起きたの!?
次々わき上がる奇妙な謎に、読み進む手が止まらない一冊。
本作のみどころは、その奇妙さだけではありません。
非常識な態度をとる帽子や、それをなくしてオタオタするお父さんを見て、あきれたり怒ったりする主人公あっちゃんの、妙に大人っぽい性格が、かわいいやらおかしいやら!
「おとなって、今自分が何をしたいのか、自分でわからないんだろうか。さびしい生き物だ……」
はたして、帽子はどこにいってしまったのでしょう?
最後の電話からしばらく経った夜中……
かの帽子は、予想だにしないとんでもない場所から、みたび電話をかけてきたのです――
(堀井拓馬 小説家)
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