わたしはどうして、ごはんを食べようとしているんだろう?
中学三年生の多鶴は、とつぜん思い出した。
自分が、ロボットだということを。
もう、人間のふりをするのに疲れた。
今日を最後に、わたしは本当のわたしにもどろう。
そして多鶴は、もう「食べる」ということをやめる。
娘のことについてなんでも恋人に話してしまう母と、その同性の恋人。
三年間なにも良いことがなかったと、多鶴の前で学校を呪う友だち。
自分がロボットであるということを、唯一信じてくれる幼馴染の男子、まるちゃん。
彼らと生きる多鶴の世界には、さみしさと、息苦しさと、ほんの少しの救いがあった――
大人に変わろうとする心のありようをもてあまし、さみしさにあえぐひとりの少女。
彼女の目から見た、そのどうしようもなく息苦しい世界を、まざまざと描き出す衝撃作!
自分では正体のわからないさみしさに、もだえたことはありますか?
心はたしかに痛んでいるのに、それがなぜなのかわからない、そんなもどかしさに襲われたことは?
十代のころそういう苦しみのなかにあった、あるいは今まさしくそのさなかにあるすべての人に、やさしくよりそう一冊です。
なにも食べないせいで、どんどん衰弱していく多鶴。
そんな彼女を救うためにまるちゃんが差し出した手は、多鶴をどこに導くのか?
自分自身の心と向き合い、家族を、友だちを――そして、世界を見つめなおす物語。
(堀井拓馬 小説家)
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