いつもの帰り道、団地の前の公園に寄り道するのが、タロウのお決まりのコースです。
いつものとおりに遊んでいると、タロウの頭にばさりと大きな影が――!?
「……っと、なんだあ!?」
なんと、おっこちてきたのは、おおきなヒョウ柄パンツ!
「おーい、こっちこっち」
そして、上の方から野太い声。
似たような洗濯物が干してあるのを見つけたタロウは、パンツを届けようと階段をかけのぼります。
すぐに済むと思ったその親切でしたが——団地の階段の先は、思いもよらない冒険へとつながっていたのです!
団地のおばちゃん、黄色い絵ばかり描く奇抜な画家、巨大な牛を部屋で飼っている闘牛士――
みんなの証言を追って、団地の部屋をつぎつぎ訪ね歩いてゆくタロウでしたが、上へ上へと登るうち、なんだかだんだん団地の様子がおかしくなって――!?
ぐにゃぐにゃとゆがんだ廊下、ずらりと並んだおかしな形のドア……
住んでいるのも、ゴリラの親子に、巨大カメレオン!?
この団地、いつもの団地とちがう!!
写実的な筆致で描かれるマカ不思議な世界は、まるで、だれかの夢の中に迷い込んでしまったような読み心地。
可笑しいような、怖いような、言いようのない感覚にゾクゾクさせられます。
「ヒョウ柄の大きなパンツ」の持ち主を探してタロウは不思議な団地をさまようわけですが、そんなパンツの持ち主といえば……そう、だれもが「あの人だろうな」と見当がつくわけです。
「あー、やっぱり」からの「うそー!?」
そう、このパンツには、そんな期待を裏切る、まさかまさかの秘密が隠されているのです……。
(堀井拓馬 小説家)
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