作者はフィンランドのアンデルセンと言われるトペリウス。この「星のひとみ」は彼の代表作です。
そしてせなけいこさんの絵からは、温かさと懐かしさを感じられて、余韻の残るこのおはなしにぴったりです。
そのおはなしは…
クリスマスの前の晩にフィンランド人の農夫に拾われたサーミ人の赤ちゃん。
その綺麗なひとみから「星のひとみ」と呼ばれて育ちます。
星のひとみに見つめられるといじめっ子はいじめるのをやめ、吹雪さえおさまり、人の心まで見通せる…そんな不思議な力を持つ星のひとみは、それゆえに次第におかみさんから忌み嫌われ、とうとうクリスマスの前の晩に再び雪の中に置き去りにされてしまいます。
すぐに農夫が気づいてさがしに行った時にはもう消えて、ついに見つかることはなかったのでした。
物語は最後、語りかけて終わります。
「いったい星のひとみは、どこにいってしまったのでしょう。
…星のひとみは、あなたのすぐとなりにいるのかもしれません。
もしかすると、あなたが星のひとみなのかもしれません。
なぜって、かがやくひとみを もっているこどもなら
だれが星のひとみであってもふしぎはないのですから」
そう、子どもが持つまっすぐなひとみは星の光のように輝いていて、それは無垢な心の入り口なのです。
人は誰でも子どもであった。純粋で静かで平和な無垢の心は誰もが持っている。
私たちは子供のまっすぐなひとみを見るたびに、心のどこかにしまっていた大切なものを発見するのかもしれない。
大人である私は、読後にそんな余韻に浸りました。
子どもはきっと消えた星のひとみに思いを馳せながら、不思議な余韻が心に残るでしょう。
見つかることはなかった、と聞いても不思議とさみしさで胸がいっぱいになることはありません。
きっと星のひとみはどこかで幸せに暮らしている、と思えてしまう。きっと星のひとみは星たちに守られているに違いない、と。
冬のお話会に。
暖かいお部屋でゆっくりと親子での読み聞かせに。
読んであげるなら4、5歳くらいから。
一人で読めるようになってきたお子さんにもおすすめします。
(山田裕子 小学校司書)
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