「きのみようちえん」の子どもたちは、園庭にあるおしろがだいすきです。
毎朝、時計の針が9時にぴたりとかさなると、おしろからは陽気な音楽が流れ出し、とてもかわいらしいお姫さまと王子さまがおしろのしかけ時計から登場するのです。
「おひめさま おうじさま おはよう」
子どもたちの楽しみは、毎日ふたりにごあいさつすることだったのですが・・・。
ある夜、雨がざあざあふって嵐がやってきたのです。
次の日、昨日の嵐がまるでうそのように晴れました。でも、あれれ?おしろの時計が9時前で止まってしまったのでしょうか。時刻は9時になっているのに、音楽も流れず、ふたりは一向に姿を見せません。昨日の嵐で壊れてしまったみたい。子どもたちは、もう一度お姫さまと王子さまに会うためにいろいろ考えて試してみるのですが、どの方法もうまくいかなくて。
そんな時、ひとりの子がひらめいたのです!
「もういちど あらしを おこせば、いいんだよ。そうしたら とけいが びっくりして うごきだすかもしれないよ」今度はみんなで力をあわせて、大きな大きな嵐を呼ぶことに・・・。でも、一体、どうやって嵐を呼ぶの?
来る日も来る日も、壊れてしまった時計をどうにか動かそうと知恵をしぼる子どもたちの直向きさ。
なんて純粋な気持ちなんでしょう。そして、そんな時でさえ遊びを忘れない子どもたちの奔放で無邪気な様子がとても素敵な作品なのです。
作者は、絵本『きいのいえで』の種村有希子さん。その優しい色鉛筆の色彩がとても印象的です。
最後のおしろを囲む子どもたち、先生たちの笑顔が好きです。
「おひめさま おうじさま おはよう」
子どもたちの大きなごあいさつは今日も聞こえてくるかな?
(富田直美 絵本ナビ編集部)
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