全米で絵本・児童書に贈られる15もの賞を受賞した『One ワン』に続く作品として登場したのが本作『Zero ゼロ』。この絵本を読んで自分に「似た境遇だ」と感じられたという乙武洋匡さんが翻訳しています。
主人公は数字のゼロ。
ある日、自分のからだの真ん中に大きなあながあいていることに気がつき思うのです。
いいなあ、みんなはかぞえられる数字で。
「1」の力強くて、堂々としたからだになったらなかまに入れるかな。
ゼロは、自分のからだをひっぱったり、のばしたり。ひねってみたり。
でも、ゼロはゼロのまま。
中身がからっぽだと思うと、自信が持てないのです。
「どうせ、わたしは なにを やってもダメなんだ。」
それを聞いてアドバイスしてくれたのが、赤いからだの「7」。
「もっと よーく じぶんを 見てごらん」
その言葉の通り、ゼロは自分をしっかりと見つめ直します。
すると自分の中にひかりを感じ・・・。
ゼロは、自分とみんなの違いを受け入れられずに悲しくなったり、自分自身を恨めしく思ったりします。そんな様子を見て乙武さんは言います。
「私と似た境遇と言えるかもしれない。しかし、大きく違うのは、そうした境遇の捉え方。私は友人たちをうらやんだこともなければ、自分を恨めしく思ったこともありません。それは、両親をはじめ、周囲の人々が幼い頃から私の存在を認め、愛情を注ぎ続けてくれたからだと思うのです。」(巻末の訳者のことばより抜粋)
自分にしかできないこと、自分だからできること。
それに気付くことができるのは、案外まわりの人のささいな声かけがきっかけになるのかもしれません。
「みんな ちがって みんな いい。」
この絵本が、悩める子どもたちにとって、何かのヒントになってくれますように。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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