なつやすみは、もうおしまい。 海から帰ってきたばかりのあたしの心は、波のようにゆれている。 その時、サンダルから砂つぶがさらさらこぼれ落ちた。
「おねえちゃん、なにしてるの?」
さっきまで泣いていた弟のユリスが聞くので、あたしは答える。
「海の砂をあつめてたの。すてるの、もったいないもん! そうだ、この砂つぶを、たねみたいにまいてみようか?」
すると、にょきにょき生えてきたのは……!?
フランスでの出版後、アメリカ、カナダ、スペインと続々と版権が売れ、各国から注目を集めているシビル・ドラクロワの翻訳絵本。思いっきり遊んで帰ってきた後の少し寂しい気持ちと、まだまだかみしめたいという気持ちから、どんどん広がっていく壮大なイメージ。パラソルの畑、アイスクリームの畑、それとも立派な砂の城?
色数を抑えた風景の中に浮かびあがるのは、鮮やかな黄色の「すなのたね」。そして満足そうな顔をしてあくびをする、女の子と弟の表情。こんな風に「夏の思い出」を振りかえることができたら素敵だなと、しみじみ思うのです。夏のおわりに開きたくなる、美しい絵本です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
フランスでの出版後、アメリカ、カナダ、スペインと続々と版権が売れ、各国から注目を集めているシビル・ドラクロワの翻訳絵本です。こぼれおちた砂の粒からどんどんとイメージを広げていく女の子。砂の種と名づけてどんなものができるのか弟と楽しそうに話していきます。パラソルの畑になるのかな?風車がいっぱいの畑になるのかな?アイスクリームの畑もいいね……。小さな砂粒をきっかけに、想像の世界を広げていく夏の絵本。
海から帰ってきて、「その夏の思い出」となった靴のなかに入った「海の砂」。
「それをまいたらどうなるのか?」という想像をする素敵なお話でした。
少し寂しくて、でも、来年の夏にも思いを馳せさせられる終わり方が素敵なお話でした。 (さくらっこママさん 30代・ママ 女の子5歳、男の子3歳)
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