神社に七夕、流れ星。
人はとくべつなときに、これ!と心に願いを決めて、つよく心に浮かべます。
そうしてほんきで願えば、願うほど、人に教えるのはちょっぴり、恥ずかしかったりして――
はりねずみくん、うさぎくん、りすくんがピクニックでむかったのは、願いが叶うといわれる湖。
ボートで湖のまんなかにこぎだし、3人は心に願いをうかべます。
「ぼくはどんぐりをたくさんとれるようにおねがいしよう!」
「ぼくはもっとはやくはしれるようになりたいな!」
でも、はりねずみくんは……
「ないしょ! おねがいごとをいうと、かなわなくなっちゃうんだよ」
それをきいて、りすくんもうさぎくんもギクリ。
ピクニックからの帰り道、ひとりで歩くはりねずみくんに声をかけたのは、ひつじばぁば。
「ピクニックはたのしかった?」
そうたずねられたはりねずみくん、なぜだか元気がないみたい――
「はりねずみくんのあかいマフラー」につづく、はりねずみくんシリーズ第二弾です。
前作では、白い雪景色にあざやかな赤いマフラーの色合いが印象的でした。
今作で、やさしい緑の草原に映えるのは、はりねずみくんが手に持つ、赤い風呂敷です。
おべんとうを運ぶバッグにもなる、お昼寝のときにはかけぶとんにもなるという、便利な風呂敷。
一面のあわい色の中に映える、ちいさな赤いアクセントがかわいい!
冬の物語だった前作から、季節は移ってピクニック日和!
やわらかなタッチで描かれる、森と湖の風景がなんとも気持ちよさそう。
ボートで湖を散歩。
野原でお弁当。
そよ風になでられてお昼寝。
読んでいると、どんどん心がのんびりスローに……
冬があけ、あたたかくかくなってきたころに親子で読みたい、いやされる一冊です。
さて、おねがいごとをいうのが恥ずかしくって、つい、ともだちにウソをついてしまったはりねずみくん。
はりねずみくんのお願い事とは、なんだったのでしょう?
(堀井拓馬 小説家)
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