「したにー、したにっ」「したにー、したにっ」
聞こえてきたこのかけ声、歴史や時代劇が好きな子ならピンとくるかな。
そう、お殿様を乗せた大名行列がやってきたようです。
いかめしい顔して腰には刀のお侍さん。籠に武器、大きな馬を引いて通り過ぎていくので、見ている私たちはもちろん頭を下げて通り過ぎるのを待ち……ん?
「なんか、この馬大きすぎない?」
思う間もなく、上から殿様が落馬してきて、ポチが馬の後ろ脚にかみつき、大名行列が大荒れになる、かと思えば今度はお団子屋に寄り道!?
「…なんか、へん!」
行列は忍者屋敷を通り、取組中のお相撲さんのいる土俵を通り、妖怪が出てきたと思えば、マンモスが…!? 一気に時代もスケールもごちゃまぜに。 一体ここはどこ? どこの世界にいるの? 大名行列を解説してくれる絵本じゃなかったの??
ちょっと油断して読み始めていた読者を、あっという間に混乱に陥れていくこの展開。それは、このスーパーリアリズムに描かれた絵のせいでもあります。説得力が違うのです。真面目なフリして、大ふざけに展開されていき、まんまとしてやられながら、私たちはこの先どこに連れていかれるのかドキドキ、ワクワクしてしまうのです。
最後にはなるほど納得のオチも待っていて…これは面白い絵本!ひとりでじっくり、親子で一緒に、大勢みんなで、それぞれの楽しみ方をしながら、さらに勝手に空想を広げていってくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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