今夜は町のはずれのピザやでパーティーです。あらわれたのはサーベル夫人。夫のカエサルと友達のポーと一緒でもひと際目立つのは、その輝くサーベル頭。ドレスもとっても似合っています。
サーベル夫人はピザを上手に切り分けてパーティーは大盛り上がり。実は彼女は町の中でも人気者。肉屋でも床屋でもレストランでも、みんなの喜ぶ顔が見たくて、切り分けて切り分けてグールグルの大忙しなのです。サーベルがすっかりボロボロになっても夫人はあまり気にかけていませんでした。
ところがある日、「パキーン!!」
なんと頭に大きなひびが。それ以来すっかりと元気をなくしてしまったサーベル夫人。周りのみんなは心配するのですが……。
いまだかつてないほど奇妙な姿の主人公「サーベル夫人」。頭はピーンと天に向かい、月の光を浴びて輝き、おまけに切れ味も抜群。そしてなんだか……とっても気高くて素敵。いったい絵本の中で何が起きているのか理解が追い付かなかったとしても、その魅力にひきこまれていることは事実。元気をなくした彼女をなんとかしたいと、町の人たちの奮起を心から応援してしまいます。
画家として、さらに立体やアニメーションなど様々な世界を通して表現を続ける網代幸介さんが初めて手がけられた絵本がこの作品。そこにはすでに昔からずっと続いているかのような世界が存在しており、私たちはその一部を覗き見たような感覚になるのです。ほら、まわりにも個性的なキャラクターがたくさん。見返しでも確認してみてくださいね。
それにしてもサーベル夫人、帽子が本当によくお似合いですね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む