ここは夜の動物園。
「ぐっすり おやすみ、ゴリラくん」
警備員のおじさんが最後の見回りをしながら、ひとつひとつのオリに声をかけていきます。
「もう ねるじかんだよ、ぞうさん」「またあしたね、ライオンくん」
さらにハイエナくんやキリンさん、ライオンくんにアルマジロちゃんにも。おじさんは、優しく声をかけていきます。きっと今日も一日しっかり仕事を終えたのでしょうね。ほっとする時間です。
ん?
なんだか様子がおかしいぞ。動物たちが……全然眠そうじゃない。むしろ嬉しそうな顔に見えます。
それもそのはず!
いたずら好きのゴリラくんが、おじさんの腰ベルトからカギ束をこっそり抜き取って、後ろからみんなのオリを開けて回っていたのです。さあ大変! ところが……動物たちが列をなしてついていったのは、おじさんの家。そのまま部屋に入り、ベッドの横でそれぞれ横になると、こんなことになっているなんて夢にも思わないおくさんが電気を消して言うのです。「おやすみなさい、あなた」すると、あちこちから聞こえたきたのは……!?
なんて可笑しくて、可愛らしいお話なのでしょう。動物たちがオリを抜け出して、やってきたのはおじさんの部屋だなんて。夢のようです。
だけど、子どもたちが、この絵本に夢中になってしまう大きな理由はもう一つ。おじさんがこの一連の出来事に全く気が付いていないってこと。おじさんは、みんなに声をかけて回っているだけ。絵本を読んでいても、文章はほとんどそれだけなのです。つまり、気が付いているのは、絵本の中の動物たちと読んでもらっている子どもたちだけ!! この共犯関係にはワクワクせずにはいられませんよね。
毎晩、何回だって飽きるまで。この愛らしい動物たちを、おじさんの部屋に連れていってあげてください。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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