サバンナの動物、その母子を追い、迫力の写真でその生態を写し出す、大人にもおどろきと感動を届けてくれる写真絵本シリーズ!
著者は、サバンナで動物を追い、その姿を収めた写真で数々の国際的な賞を受賞してきた写真家、ガブリエラ・シュテープラー。
今回のテーマは、カバです!
カバといえば、どんなイメージをお持ちでしょう?
のんびりで、おだやか、どこかユーモラス。そんな印象ではないでしょうか。
しかし、実はとても怒りやすい性格で、アフリカではライオンやヒョウよりも、カバの犠牲になる人間のほうが多いというではありませんか!
動物園で見る彼らの姿からは、とても想像できないことですよね。
しかし、ひとたびこの作品をめくってみれば、カバへの印象はすぐに変わります。
なわばりに侵入したオスと対峙し、群れを守ろうと戦うなわばりの主人。
あの小さな目をカッと見開いて相手をにらみ、敵を丸呑みにしようとでもいうように大きく口をあけて、ナイフのように鋭い二本の牙を構える二匹。
その姿はまさしく、弱肉強食の世界で戦いながら命をつないできた、強靭な野獣そのものです。
あまりに恐ろしげな表情で戦うので、ぞくりと鳥肌が立ってしまいました。
カバを前にしてはワニたちさえ逃げ出すというのも、うなずける話です。
カバたちを襲う唯一の敵、百獣の王ライオンですら、危険な戦いになるカバ狩りを、めったにはおこなおうとしません。
もちろん、恐ろしい一面ばかり取りあげるわけではないのがこのシリーズ。
プリッ! ツヤッ! とした見た目をした赤ちゃんカバの、なんてかわらしいことでしょう!
水音にびっくりした赤ちゃんカバが、まだ一本の歯も生えていない口を大きくあけて、威嚇の真似事をする姿など、あまりの愛らしさに思わず笑みが浮かびます。
また、水面に浮かぶ浮き草が、背中にのったままでもまるきり気にしていない様子などは、おっとりとしたイメージのカバそのもので、とってもチャーミング。
やはり、野生の動物はひと味もふた味もちがいます!
動物園では見ることのできない、知られざるカバのいろいろな表情を楽しんでください。
(堀井拓馬 小説家)
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