元気いっぱいのやさしい女の子、マルラゲット。
ある日、マルラゲットは森でオオカミにおそわれます。
必死で抵抗してなんとか食べられずに済んだマルラゲットですが、代わりにオオカミがケガをしてしまいます。
「ほら、バチが当たったのよ!」
しかし、痛みに声をあげ、気を失い弱ってしまったオオカミをかわいそうに思ったマルラゲットは、それからいく日もつきっきりで看病をします。
はじめてだれかからやさしくされたオオカミ。
やがてマルラゲットのことを大切に思うようになったオオカミは、彼女にきらわれたくない一心で、こんな約束をかわします。
「もう、動物は食べないよ」
1952年に刊行されてから、世代を越えて読み継がれる名作絵本!
子どもの感受性や創造性を豊かに育てることを目的にフランスで創刊された絵本シリーズ、「ペール・カストール」の代表作です。
誰かを大切に思う気持ちや、自分とはちがう価値観を持っただれかに対する思いやりなど、普遍的なテーマを扱いながら、子どもに寄り添った感情表現で、やさしく深い共感を呼ぶ作品です。
特に、互いを思いやるマルラゲットとオオカミの、表情やしぐさの細やかさがみどころ。
場面ごとでさまざまに彩りを変えるふたりの感情のみずみずしさは、いかにも子どもらしく純粋で、美しいとすら感じさせます。
約束を守って肉を食べず、どんどんやせほそっていくオオカミ。
オオカミが生きるためには動物の肉を食べなくてはならないと知って悩むマルラゲット。
純粋な彼らの出した答えとは?
子どもの本があまりなかった時代に「子どものための質の高い本を!」という想いで作られたシリーズということもあって、子どもへの願いと思いやりにあふれた、とてもあたたかな作品です。
実際フランスにおいてそうであるように、日本でも長く読み継いでいきたいと思わせる一冊!
(堀井拓馬 小説家)
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