箱。あかない箱。
なにがはいっているのかわからない。
ふると、音がする。
コソコソ 音がする。
なにがはいっているんだろう。
雨の降る日、
気づくと箱はあいていた。
でも、箱はからっぽ。
音がしたのにからっぽ。
いったい、なかみはどこに・・・。
次々とあかなくなる箱、引き出し、クローゼット。
あかなくなる対象物が大きくなる恐怖。
箱の中から聞こえる奇妙な音も
どんどんエスカレートしていきます。
そして、口を開いた箱には
やはり何も入っていないのです。
また、だれかいなくなるの?
また、なにかあかなくなるのかな。
少女の不安が終わらぬスパイラルのように連なって
最後のページを読むのが怖い。
でも読まずにはいられない。
「ゾクッ」とする恐怖とはちがう、
ゆっくりと背筋が凍っていくような
静かな狂気に心が震えます。
小野不由美さんの作り出した恐怖の物語をたどるうちに、いつしか、nakabanさんの描きだす美しくも閉ざされた異次元の「はこ」に迷いこんでしまいます。この絵本は、「怪談」を生み出す人気作家と画家が紡いだ子どものための「怖い」絵本「怪談えほん」シリーズ第2期全5巻の1冊です。2011年10月から刊行されたこのシリーズは、本作の監修者であり文芸評論家である東雅夫さんの明確な企画意図があります。
「『怪談』を通じて、想像力を養い、強い心を育んでほしい。幼いころから怪談に親しむことによって、子どもたちは豊かな想像力を養い、想定外の時代に直面しても平静さを保てる強い心を育み、さらに命の尊さや他者を傷つけることの怖ろしさといった、人として大切なことのイロハを自然に身につけてゆくのです。」
大人になっても思い出す、忘れられない1冊になりそうです。
(富田直美 絵本ナビ編集部)
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