“むかしむかし、うらしまは助けたかめに連れられて、竜宮城へ来て見れば、絵にもかけない美しさ”
と、歌があるほど有名な「うらしまたろう」のお話。
けれど読み始めてみると、覚えているお話とどこか違っているような…。
それもそのはず。浦島太郎のお話は、実は、口から口へと語り継がれてきた昔話ではなく、古代より伝説として記されてきた文学なのだそう。皆さん、ご存知でしたか?私はこの絵本に出会ってはじめて知りました。こちらの絵本は、八世紀頃に記された『丹後国風土記』の浦島子の物語をもとに再話されたということで、より幻想的で自然にすっと胸に入ってくるようなストーリーとなっています。
うらしまたろうの出だしといえば、まずはかめをいじめる子ども達の登場ですよね。しかし、こちらではいじめられるかめの場面は出てこず、うらしまたろうが沖で大きな五色のかめをつりあげるところから始まり、そこからどんどん美しい世界へ誘われていきます。
その美しい世界をうっとりするような繊細な色づかいで描き出しているのは、飯野和好さん。また飯野さんが描くうらしまたろうは、なんて凛々しくて色っぽいのでしょう。にぎりめしをほおばる姿や、竜宮城の戸から母を思って遠くを眺める姿には、ほれぼれしてしまいます。一方、広松由希子さんの生き生きとしたリズム感のある文章も大きな魅力です。声に出しても気持ちよく読めそうですよ。
では肝心の終わり方は…?それは読んでのお楽しみですが、こちらもまた美しい終わり方に、思わず、はあっーとため息が出てしまいました。「うらしまたろう」に初めて出会う子ども達はもちろんのこと、何度も読んで知っている大人の方も、ぜひ、一味違った本格派「うらしまたろう」をあらためて、楽しんでみてはいかがでしょうか。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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