学校帰り、ランドセルを背負って眉をよせて歩く男の子の横顔。
「きょうもせんせいにおこられた。
もうっ!
あのけんかは、ぼくだけが
わるいのとちがうのに。」
足元に、泥だらけのボールが落ちていることにぼくは気づきます。
近くで歩く、小さな子の手をひくお母さんは「あんなきたないボール、さわったらあかんよ」と言っています。
ぼくはボールを思いきり蹴飛ばしました。
でもぼくは、いつか道でお父さんと財布をひろって交番に届けたことを思い出し、蹴飛ばしたボールを探します。
ボールを手に、
「こんなボール、こうばんにとどけてもしかたないやろか」
迷い、考え考え歩いて、いつのまにか交番の前に来ていたぼく。
ドキドキしながらボールを差し出したぼくに、おまわりさんは……?
信頼できる大人に出会った子どもの心の成長を描く絵本。
絵本の中の「ぼく」には、今、お父さんがいません。
なぜなのかは絵本の中で描かれていません。
でも、友だちとけんかをした原因は、お父さんのことを言われたから。
ボールを蹴飛ばしたのは、もやもやした気持ちがあったから。
そんな心の中の思いを、受け止めてくれたのは、交番のおまわりさんでした。
「きみは、ええ子や!」
そう誰かに言ってもらえることが、子どもにとってどんなに力になるでしょう。
ぼくはおまわりさんとキャッチボールをして「ええたまいっちょう!」と言ってもらいます。
「ナイスボール!」と褒めてもらうこと。
子どもの願いはそれだけなのかもしれません。
吉田尚令さんが描く子どもの表情に心を寄せたくなる一冊です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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学校からの帰り道、男の子は泥だらけのボールをひろって、交番へ届けに行った。
若いおまわりさんが、ニコッと笑って落し物を受け取ってくれた。
交番でおまわりさんと話をする中で、男の子は、お父さんが
「落し物は交番に届けるんだ」と教えてくれたことを語ります。
それから、今日は学校で友達とけんかになったことも。
交番の隣で、男の子はおまわりさんとキャッチボールを始めます。
「おっ、『ええたま いっちょう』や」
「それ、どういう意味?」
「『ナイスボール』って言うことや」
信頼できる大人に出会った子どもの心の成長を描いた、感動の絵本。
<くすのきしげのり先生より>
若いおまわりさんとのキャッチボール。
心のキャッチボールでもあったそれは、「ぼく」にとって、とても大切な時間となりました。
「どんな けいさつかんに なりたいんや?」
おまわりさんの問いかけに、「ぼく」は答えます。
「おまわりさんのような けいさつかんや!!」
「お父さんのような人になりたい」
「お母さんのような人になりたい」
「先生のような人になりたい」
みなさんは、「〜のような人になりたい」と思ったことはありますか。
「〜のような人になりたい」と思うこと、それは、生き方への共感であり憧れです。
自分のまわりに、そう思える人がいることは、子どもたちにとっても、そしてもちろん大人にとっても、すてきなことですね。
くすのき しげのり
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