童謡や詩を数多く手がける武鹿悦子さんと、『あめふりさんぽ』『はこちゃん』などの絵でファンを増やす江頭路子さんが、いつの時代にも世界共通の“母の祈り”をこめておくる絵本です。
あかちゃんが生まれて、はじめておかあさんになった夜明けのことを、女性はきっと覚えているでしょう。
ちいさい手、ちいさい足に触れ、わたしがこの子を守ってあげなければと思ったことを……。
「いっしょに うみを みようね
いっしょに かぜのおとを きこうね」
このちいさな子どもが、これから先、世界を愛すべき場所としてすくすく育っていきますように。
おかあさんの祈りのような呼びかけは、つぎの言葉へとつづきます。
「この かわいい ても
いつか おかあさんのてを つつみこむほど
つよく おおきくなるでしょう
その てが
どうか
銃など にぎりませんように」
世界中のたくさんの子どもたちが、銃が日常のそばにある暮らしをしています。
子どもたちから平和な日常を奪わないでほしい……。
ほんとうは、それが多くのおかあさんの願いなのです。
小鳥の声からはじまる朝や、おかあさんがつくる朝の食事。
まどべで月をみるしずかな夜。
そして、この子がやがて大人になり、いっしょに生きる人と出会い、愛するいのちを抱くよろこびを。
どうか奪わないで……子どもたちから。
声にだして読むと、言葉が歌のように、心に直に流れこみます。
子どものしあわせとは何か、同時に、親として生きるしあわせは何かを、親子でいっしょに感じ考えることができる絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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