ある寒い日、トーマスは家にあるクッションや毛布を集めて「ほらあな」を作ります。
子どもなら誰でも必ず一度はする、基地遊び。
完成し、早速こもって本を読もうとすると、ほらあなに先に入っていたのは「クマ」!
恥ずかしそうにこちらを見つめるお邪魔なクマを追い出すため、トーマスはあの手この手で誘い出しますが―−。
「基地遊び」は子どもたちにとって、ちょっと特別だけれどよそゆきではない、ごく日常の光景です。
そこに得体の知れないクマという存在が入り込むことで、こんなにもドキドキさせられるとは。
ほとんど後ろ姿しか見せないクマを、読んでいる子どもたちは、きっと不安と好奇心がないまぜになったまなざしで、夢中になって追いかけることでしょう。
このクマ、一体何なんだろう、と。
でも、どこか安心感も感じるはず。
それはおそらく、トーマスのふるまいが呼び起こすもの。
彼はほらあなからクマを「おいださなくっちゃ」と言いつつも、ブルーベリーをあげたり、孫の手をあげたり。まるで「いつものこと」のように対処しているのです。
それはつまり、どういうことなのでしょう?
読み手の素直な疑問に答える結末が、最後にちゃんと用意されています。
ちょっぴりの緊張がスパイスになって、癖になりそうな読後感の一冊です。
(てらしまちはる ライター/こどもアプリ研究家)
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