長く、つらい修行をのりこえ、その道を極めた、達人中の達人……それが、仙人です。
ここは、そんな仙人たちだけが住むことのできる「せんにんむら」。
お絵かきを極めた、おえかきせんにん。
世界中の占いができる、うらないせんにん。
体を浮かせることのできる、うきうきせんにん。
いろいろな仙人がたのしくくらすこの村に、眠らないことを極めた仙人、「ねむたくないせんにん」がいました。
その“眠たくなさ”といったら、なんと300年も寝たことがないというのです!
そんなねむたくないせんにん、ある日となりに住む「おひるねせんにん」から、最高級のパジャマとお布団をもらいます。
せっかくだからと、パジャマを着てお布団にくるまってみれば……。
ふっかふか、ふんわふわ、すっべすべ!
「おふとんって きもちいいな〜」
これには、眠らないことを極めたはずの仙人様も、思わずふわぁ〜と、おおあくび!
ややや、あぶないあぶない!
「ぜったい、ねむたくない! ぜったい、ねむたくない!」
あわてて目を覚まそうとする、ねむたくないせんにんですが──。
300年ぶりにフワフワのお布団にもぐりこんだ仙人の、気持ちよさそうな表情ったら!
まだ起きてるうちから、うっとりトロトロ、夢見心地……。
ああ、もうぜ〜んぶほっぽりだして、お昼寝タイムにしたい!
そうしてきびしい戦いを終えた、ねむたくないせんにん。
眠らないことを極めたはずの仙人が眠気におそわれ、いったいどんないいわけを口にするかと思いきや……。
そのひと言で、落語のようなオチがつきます。
お昼寝好きなあの子にも、寝るのが嫌いなあの子でも、読めばお布団恋しくなって……もう、今日はおやすみなさい〜……。
(堀井拓馬 小説家)
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