きれいな部屋って、気持ちがいいものですよね!
チリひとつない床。
すきとおった窓。
でも、マグスおばさんくらいのきれい好きな家族がいたら……ちょっとイヤかも。
ある土曜日、スージーはマグスおばさんといっしょに、動物園にいくことになりました。スージーはマグスおばさんのことが好きでしたが、あまりにもきれい好きすぎるところだけは、好きではありませんでした。
マグスおばさんったら、会うなりスージーの体を拭き、髪をとかし、着替えをさせ……
スージーがピカピカになると、そうしてこんどは家の掃除に、ペットのお風呂!
いったい、いつになったら動物園にいけるの!?
いやはや……動物園にいくお話なのに、いつまで経っても家から出ないものだから、なんだかスージーといっしょにじれったくなってしまいます。
動物園にいったらいったで、ライオンの髪をとかしたいだの、シロクマのくせにまっ白じゃないだの……
見るものすべてに、清潔感が足りないとケチをつけるしまつ!
けっきょく最後には、そのきれい好きが原因でひどい目にあってしまいます。
「いわんこっちゃない!」と笑えもしますが、思いのほかトンデモナイ目にあうので、かわいそうでもあり……
そのころにはすっかり、憎めないキャラクターとして愛着がわいてしまっているはず。
本作は、訳者の小宮由さんが、絵本から読み物へ移行する時期の子どもたちに向けて厳選した物語、「こころのほんばこ」シリーズの一冊です。
おとなが読むと、「マグスおばさんったら、なんて生きづらい人なんだろう……」と哀しくもおかしみにあふれた物語に感じますが、子どもたちはどうでしょう?
笑える?
かわいそう?
うんざり?
読み手によって味わいの変わるところがみどころの本作。
子どもたちの心にこの物語がどう映ったか話してみると、思いもよらない視点におどろかされるかも!
絵本より文字量は多いですが、全ページに挿絵があって、読み物デビューにはぴったりの一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
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