あんちゃんは、すごいんだぜ。体はでかいし、腕ずもうも学校でいちばん。
この前なんか、餃子30個も食べて「いいかげんにしなさい!」ってかあちゃんに怒られてたよ。
あんちゃんとおいらが入っている町のソフトボールチームでは、あんちゃんはファーストで四番。
ちょっと足はおそいけど、おいらの自慢の兄ちゃんなんだ。
でもある日、おいらは聞いちゃった。あんちゃんはどんどん目が見えなくなる病気だって家族で話をしていたのを…。
「うそ!!」
大事なソフトボールの試合、最終回、2アウトランナー2塁。つぎはあんちゃんの打席。
あんちゃんは気合を入れて、ブーンブーンとバットを力強くふっている。
「いけ!あんちゃん」
“おいら”の大事な“あんちゃん”を、大らかで魅力的に描いているのは高部晴市さん。
このお話は、高部さんが長年関わった少年ソフトボールチームにいたある少年のことを、実際のお話をもとにつくられた絵本なのだそう。あんちゃんが病気と元気に戦っていけるのは、大好きなソフトボールがあって、ともだちがいて、自分を愛してくれる家族がいるからなんだと、物語を通して伝わってきます。
あんちゃんは、病気のことを知ってもいつものあんちゃんで、大会の時には、いつもよりも気合の入ったあんちゃんで。あんちゃんは、何があったってニコニコ笑って頼もしい。
そんなあんちゃんは“おいら”だけでなく、読者のみんなも元気にしてくれます。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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