かあちゃんに、おこられてばかりいるけんたろう。
とうちゃんとお風呂に入るときに、つぶやきます。
「ぼくな、いっぱい おいてあるのが すきやねん。
ちらかってるん ちゃうねん。
にんじゃごっこ、いっしょに してほしかってん。」
「ぼくな、みててほしいねん。
たちこぎで めっちゃ たかいところまで いけるねん。」
だけど、かあちゃんはこう言うんです。
「かたづけや〜!」「まだやんのかいな〜 もうおわりにして!」って。
子どもにとっては、気持ちを代弁してくれる絵本です。
親には、身に覚えのあるセリフがぐさぐさと胸にささります。
はみがき、きがえ、シャンプー、くすり、注射、夜のおしっこ……。
子どもがきらいで、毎日スムーズにいかなくてひっかかること、たくさんありますよね。
けんたろうは、「ぼくが きらいなことだらけやから、かあちゃんが おこりんぼマシーンになってまうんやろか。」と考えます。
「かあちゃん、ぼくのこと きらいになってしもうたんかなあ。」
絵本の中のとうちゃんの表情はの〜んびり。お湯につかって淡々としています。
けんたろうはちょっぴり落ち込んでいます。でも、なんだか平気そうでもあります。
かあちゃんに愛されていることを、なんとなくわかってるからかもしれません。
それでも……
やっぱり子どもは「ぼくをきらいになったかな」と不安になります。
本書は、おはなしの持つ力を大事に絵本づくりをしていこう、という出版社の思いがこめられた「おはなしえほん」シリーズの一冊。
「子どもをめぐるうまく言葉にならないこと」をテーマに活動する小西貴士さんがおはなしを書き、『ボタ山であそんだころ』などの作品がある石川えりこさんが、親子を表情ゆたかに描いています。
子どもの気持ちをほりおこし、寄り添うことを教えてくれるおはなし絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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