狭いきゅうくつなカゴの中で、ひとりぼっちのほたる。
夜の空を、友だちと自由に飛んでいましたが、突然、男の子につかまえられてしまったのです。
夜、友だちのほたるが助けにきてくれないかと、ぴかり、ぴかりと光ります。
でもだれも助けてくれません。
だんだん弱ったほたるは、仰向けに転がって動かなくなってしまいました。
男の子はほたるが死んだと思って、窓の外へ投げ捨てます。
でも、ほたるは本当に死んではいなかったのです。
「かわいそうな ほたるさん」と白いバラの花がぽたりと落とした涙のしずくで、ほたるは息をふきかえします。
生きて外にいることを喜びつつも、弱ったほたるはこう言います。
「ぼくは もう からだが よわっていて だめです」
「ここに じっとしていよう。うつくしい きみの そばで、きみの においに つつまれて しんでいければ しあわせだ」
するとバラは言うのです。
「あなたは、あなたの ちからで もういちど あの そらへ とんでいかなければ だめよ。だいじょうぶ。あなたは とべるわ」
バラの言葉に励まされ、夜空を見上げたほたるは……。
小さな黒いほたるのつややかな愛らしさと、白いバラのしっとりした美しさが印象的な絵本です。
関英雄さんの日本語のうつくしさが感じられる文章とともに、いもとようこさんが貼り絵でつくる世界をぜひあじわってください。
いもとようこさんの絵のファンの方は、赤白のバラは必見ですよ。
純粋な、真摯な心で「だいじょうぶ。あなたは とべるわ」とほたるに語りかける白いバラ。
弱った体にふたたび力を感じて、飛び立つほたる。
命のはかなさと、ぴかりぴかりと光るほたるの尊い輝きが、胸にのこる作品です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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