イスーン国の王様は、イスが大好き。
もっといいイスを手に入れようと「いいイスコンテスト」を開催することを思いつきます。
「自分が 一番 いいイスだと 思うものは、十日後、おしろへ 来ること。
ゆうしょうした イスには、ほうびを さずける。」
これを知った国中のイスたちは、われこそはと、おしろを目指します。
同じくコンテストを知って参加したくなったのは、ヒモで縛った新聞紙の束「タバー」です。
タバーを縛ってくれたおばあさんが、いつもタバーに座って「すわりやすくて、いいイスだ」というからです。
おしろを目指して出発したタバーですが、ほかのイスたちはちっとも仲間扱いしてくれません。「ゴミじゃないか」などと言うイスまでいます。
悲しくても先へ進むタバー。すると、道中でケガをしたり困ったりしているイスたちと出会って―――。
いったいコンテストは、どうなるのでしょう? 王様はタバーを見て何と言うでしょうか?
バカにされても諦めない強さや、困っている人に迷わず手を差し伸べる優しさ。
新聞の束というなかなかない主人公ですが、読み進めるうちに子どもたちはいつのまにかタバーのことを応援してしまうはず!
挿絵に描かれるたくさんの種類のイスも見どころのひとつ。
丸イス、ベンチ、パイプイス……、いろんなイスがぞろぞろ道を歩いていく場面にワクワクします。
このイス見たことある、このイスはどんな場所に似合う?と、盛り上がりそうですね。
おしろにつく頃にはすっかりみすぼらしくなってしまうタバーですが、タバーの行動は、イスたちの心を動かして、晴れやかなハッピーエンドが待っています。
イスたちと並んだら、どう見たってイスじゃない、タバー。
イスだと言い切る姿は、おかしみさえあります。
でも、大好きなおばあさんが自分を「いいイス」と言ってくれたからと、それだけでまっすぐに進んでいくタバーは、大人から見ても何だかかっこいいのです。
さらに、イスとは何なのか、みんなに新しい視点までくれるんですから。
自分を信じることってときどき難しい。いつか、この本を読んだ子どもたちが、何かのときにタバーのことを思い出してくれたらいいな、と思います。
読みやすく、先が気になる楽しいおはなし。絵本から読み物へ挑戦する子どもたちにぴったりの一冊です。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
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イスーン国の王さまは、イスが大好きで色々なイスを集めています。ある日、もっといいイスを集めたいと思った王様は、一番いいイスを決める「いいイスコンテスト」を開催することにしました。その知らせを見たイスたちは、我こそは、とお城を目指しました。
同じように、コンテストに参加したくなったのは、おばあさんに新聞を束ねてしばってもらった「しんぶんのタバー」です。他のイスと同じように、お城を目指しますが、途中、他のイスたちに「きみは、イスではない。ただのゴミだろう」と言われてしまいます。それでも、タバーは前に進み、途中、あしが折れたゆりイスや、バネが飛び出たソファーに出会うと、励ましたり、自分の新聞やひもを使ったりして助けました。お城の人を呼ぼうと急いだタバーは、到着すると同時に力尽きてしまいますが……⁉
自分のことだけでなく、他人を助けようと行動できる思いやりが感じられる、心温まる幼年童話。
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