本に収められているのは、13通の手紙。
でも最後まで読まないと、誰から誰に書かれた手紙なのか分かりません。手紙のラストで分かる「差出人」と「受取人」。読みながら、これってもしかして……とあこれ考えをめぐらせながら読んで、最後に答え合わせ。どう、予想は当たった? それともはずれだった?
手紙の「差出人」は人間とは限りません。 また生きているとも限らないし、同じ時代に生きているもの同士でないことも? なんとも不思議な手紙のやりとりは、いったん常識の枠を取り払って、視野をいろいろな方向にひろーく持って想像をめぐらせてみないと簡単には当てることができません。
それぞれの手紙の書き手は、児童文学界の著名作家である、たからしげるさん、宮下恵茉さん、吉野万理子さん、森川成美さん、みずのまいさん、芝田勝茂さん、村山早紀さん、石井睦美さん、令丈ヒロ子さん、松原秀行さん、天沼春樹さんの11名。読んだことのある作家さん、お気に入りの作家さんなど書き手の方のお名前から選んでみたり、目次を見て、気になる題名のお話から開いてみるのもいいでしょう。どのページから読むかは読み手の自由。どこから読んでも楽しめる気軽さも魅力です。
中でも私が一番「差出人」に驚いたのは、宮下恵茉さんの「りなへ」という手紙、読んでいて一番ワクワクしたのは、松原秀行さんの「踊る配達人」でした。
それではちょっと読み始める前に謎解きの練習を。
「味があって、奥ゆかしくて、ある意味楽しくて、しかも自分の気持ちをまっすぐ相手に伝えることのできる方法が、手紙じゃないかと思うんだ。」
「その気になれば、書き手は心のこもった奥深い言葉や表現をいくつもならべることができるし、読み手はそんな言葉や表現の数々を、何度もかみしめるようにして、じっくりと味わうことができるんだ。」
こんな風に手紙の良さを「読者のきみへ」と伝えながら、まわりで「ぱさっ、とん」「どばさっ」などの音をさせている「まえがき」の「差出人」。なにやら手紙なしでは生きていけない立場にあるのだそう。ヒントは「赤い服が似合う」ものだそうだけれど。さて誰からのメッセージなのか分かりましたか?
朝読の短い時間や、勉強の合間の気分転換にもぴったり。誰かから誰かへのプライベートなお手紙にハラハラドキドキしながら楽しんでみてくださいね。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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ここにある13通の手紙。そっと中身を読ませてもらいましょう。
これらの手紙が、「だれ」から「だれ」へ書かれた手紙かわかりますか――?
ラストでわかる、まさかの「差出人」と「受取人」!
児童文学界の著名作家11人が描く、5分間ノンストップショートストーリー!
【もくじ】
ぼくって赤い服が似合うんだ――たからしげる/しいちゃんへ――宮下恵茉/永遠にそばにいる――吉野万里子/わかれ道――森川成美/たったひとりの希望の君へ プレイA――みずのまい/たったひとりの希望の君へ プレイB――みずのまい/りなへ――宮下恵茉/シー・ラヴズ・ユー――芝田勝茂/だれも知らない小さな祈り――村山早紀/座敷わらしを知っていますか(往・復)――石井睦美/おしえてほしい(往・復)――令丈ヒロ子
★番外編 手紙にまつわるお話★
踊る配達人――松原秀行/風がはこんだ手紙――天沼春樹
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