ここは江戸のおおひろば。
たくさんの見世物小屋がひしめきあい、中でも妖怪の見世物が大流行。
どの小屋も、手の込んだ作り物の妖怪と大きなしかけで、客を取り合っている中で、
一軒の小さな小屋で座長がひとりため息をついています。
人気がないこの小屋は、大掛かりなしかけも作れないし、役者に払うお金もなく、すっかりさびれてしまっていたのです。
そこへ、「おじさん、ここで おいらに げいを させておくれ。」と、小さな男の子がやってきました。
おじさんはその子の「芸」を見てびっくり仰天。なぜって、長〜くのびる首、彼は本物の妖怪ろくろっくびだったのですから・・・!
作者は、『おかしのまち』(フレーベル館)や『たのしいたてもの』『てんぐのきのかくれが』(教育画劇)の青山邦彦さん。もともと建築設計事務所で働いていたという青山さんは、絵本の作品でも、建築家の目線を感じる精緻なタッチの建物の絵で、私たちを夢中にさせてくれます。
江戸時代が舞台の今作でも、青山さんの描く見世物小屋や活気のある江戸の町並みは、本当にその場をのぞいているような現実感たっぷり!
そのリアルさで妖怪たちが登場するのだから、その景色は想像以上の迫力なんです。見上げるような「大入道」や「つるべおとし」、たくさんの妖怪たちが江戸の町を練り歩くワクワク感たるや!
画面のすみずみまで細かく描きこまれた町の絵は、絵探しのようにじっくり楽しめます。
町にまぎれている妖怪を探すのもよし。翻弄される町の人たちを観察するもよし。眺めるたびに新しい発見がありそうです。
最後のページに、お話に出てくる妖怪の一覧がついていますので、好きな妖怪を探してみてくださいね。
妖怪が好きな子、絵探しが好きな子、面白いお話を探している子に手渡してあげたいとっておきの絵本です。
(掛川晶子 絵本ナビ編集部)
続きを読む