ここは、ウトピア王国。豊かな自然にかこまれた美しい国。
ふだんは平和なこの国に、“とある有名な悪事”を働こうとお城にやってきた、不届きものがいるようです。
この日、ウトピア王国の王さまをたずねてきたのは、ふたりの「仕立て屋」。
仕立て屋は、洋服を作るのが仕事です。
「おうさま、ごらんください! このすばらしい布を!」
仕立て屋たちがそういってうやうやしく差し出したのは、なんと、「正直で賢い人にしか見ることができない布」!
なんだかその布、どこかできいたことがあるような……?
そう、もちろん、そんな布はありません。
しかし、見栄を張った王さまは、ありもしない布で服をつくらせた洋服を着て街を歩き、あくどい仕立て屋たちはまんまと大金を手にいれて——
なーんてことにはならないのが、偉大なるウトピア王国!
王さまもお妃さまも、家来たちだって、そんなウソにはだまされません。
必死にウソをつき通そうとする仕立て屋たちに、怒った家来たちは、剣を抜くすんぜん!
王さまも、ふたりにきびしい罰を与えようとしました。
ところが、そのとき——
「ほんとうだ。なんて美しい布なんだ!」
ウトピア王国のルークス王子が、そういって声をあげました。
「正直で賢い人にしか見ることができない布」をたいそう気に入った王子さまは、なんと、仕立て屋たちの持っている布をすべて買いとるとまで言いだしてしまいます。
「この布で、ぼくの服をつくってもらおう!」
このまま、ルークス王子があの“恥ずかしい結末”をむかえてしまうことになるのでしょうか——?
「うでのいい くつや」につづく、ウトピア王国シリーズ第2弾。
こんどのお話は、ウトピア王国の王子さまが大活躍します。
キラリとひらめきするどく光り、罪を憎んで人を憎まず——
ルークス王子の、なんという王の資質でしょう……
思わずひざをつき、こうべを垂れて忠誠を誓いたくなってしまいます。
これほどやさしく賢い王子さまがやがて王さまになるのなら、ウトピア王国の未来は安泰ですね。
トンチの利いた笑えるオチがついたかと思えば、さらに人情味あふれる意外な結末も待っていて——
だれもが知っているあの童話になぞらえているからこそ、「なるほどこうきたか!」という新鮮なおどろきがたのしい一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
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