かつてはペルシア帝国として、現在は石油大国として栄えるイラン。 都市と遊牧の人々のくらしを、対照的に紹介しています。
2009年発行。イラン各地を取材し、自然や歴史、産業、宗教、人々の暮らし(都市、地方、遊牧民など)、伝統工業、子どもが通う学校などを紹介する写真絵本。
産油国、イラン・イラク戦争(1980〜)、イスラム・シーア派、砂漠…あまりにも文化も歴史も違い、遠い国で、断片的な情報しか入ってこない。私は小学生時代にイラン・イラク戦争のニュースがしょっちゅうテレビで流れていたのと、おおよそ中東の国については紛争などの問題がニュースで流れるので、石油と戦争の印象が強かった。
イスラムについても、かなり誤解していた。イランといっても、日本の4.4倍の広さがあり、砂漠以外にも山や農地、都市もちゃんとある。人々は地域や民族の伝統、仕事なども様々で、いろんな暮らし方がある。特に遊牧民は、日本では見ることがないので興味深い。都市部は日本と同じように、住宅難や水不足、人口増加などの問題があり、親近感を覚えた。
イスラム教でも、シーア派という少数派のグループに属するらしく、いろんな制約がある。女性の服装や宗教行事、祝日などが独特だ。しかし、断食やお祈り、男女別の学校などは、意外と楽しそう。食事も新鮮な農産物などが手に入り、美味しそうだ。
歴史が古く、民族がそれぞれの文化を誇りに思っている様子が伺える。都市の大学で学んだ学生が、故郷の遊牧民族の元に戻り、教師として教えている。「民族の誇りを大事にしたいから」という理由で民族衣装を着て授業をしている様子は、感動的だ。
自分は誇れる文化や残したい先祖からの有形無形の遺産を大事にしているか?と思うと、イランの人たちの志の高さが尊く思う。
中東の近隣の国の同シリーズ本も、合わせて読み進めれば、この地域一体のおおよその様子が把握できて、面白いと思った。 (渡”邉恵’里’さん 40代・その他の方 )
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