仙台市生まれの戦場カメラマンは、言葉を失うほど破壊された故郷の姿と、
しかしそこで生き抜こうとする人々を、カメラと言葉に刻みました。
3月11日、14時46分。
震源地は三陸沖、マグニチュード9.0。
世界の戦場を
目の当たりにしてきた
カメラマン、
高橋邦典が見たものは
すさまじい破壊のあとと
はてしなくひろがる
悲しみの大地だった
前触れもなく突然襲った地震と津波は、
人々になんの心の準備を与えることもなく、
家族や家を奪っていきました。
これまでの「ごく当たり前の生活」が
一瞬にして吹き飛んでしまったのです。
普通の人間であれば誰もが
うちひしがれてしまうでしょう。
僕が東北で出会った多くの人たちも、
おそらくそうであったにちがいないと思います。
しかし、彼らはただうちひしがれているだけでは、
これから前に進めないことも知っていたのでしょう。
「自分より大変な人たちがいるのだから・・・・・・。」
そう自分自身に言い聞かせることによって、
彼らは自らを奮い立たせていたのではないでしょうか。
同時に、「他者に対する思い」を忘れないことによって、
自らの尊厳を保ち続けた、ともいえるかもしれません。
(「あとがき」より)
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