海が見える丘の上に、タコさんのお弁当屋さんがあります。
その名も、タコキッチン。
タコさんが仕込みをしてお客さんを待っていると……やってきたのは、空のお弁当箱。
「いらっしゃい。なにを つめましょ」
「シャケべんとう ください」
そこでタコさんは長い手足で、シャケやレンコンを詰めたり、白ごはんに黒ごまをふりかけたり。
さっさか くねくね。さっさか くねくね。
色とりどりのおかずを詰めて、できあがったお弁当は……。
「うわぁ。きょうも おいしそう!」
お昼前になると、タコキッチンの前には、空っぽのお弁当箱の行列ができます。
そしてずらっと並んだ箱に、タコさんは次々おかずを詰めていきます。
ハンバーグ弁当、ほたてわっぱ、サバ味噌弁当、シーフードカレー、ステーキ、天丼、そぼろ、のり弁……。
さっさか くねくね。さっさか くねくね。
汗をかきかき、大忙し。ついに仕込んだ材料はみんな売り切れ。
そこへ小さなお客さんがやってきて……。タコさん、どうする?
第5回MOE創作絵本グランプリ受賞作を絵本化。月岡陽太さんの絵本デビュー作です。
タコさんの立派な眉毛と口ひげは、歌舞伎役者の隈取りみたいで、かっこいい!
お店がタコの形をしていることや、タコさんが修行時代を思い出すちょっとした場面がユーモラス。
絵に独特の風合いがあり、レトロな色彩のお弁当がおいしそう!!
タコ足を駆使してお弁当を詰める姿が、またたまりません。
タコさんが愛情こめて作るお弁当と、あたたかいストーリーは、じんわり心に幸福感をのこしてくれます。
すみずみまで絵を眺めて楽しい、読んで楽しい。
わが家の本棚の、おいしそうな絵本コーナーにぜひ加えたくなる一冊です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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