本が好きな、こだぬきトミー。
絵本「いっぴき オオカミ」の主人公に憧れたトミーは……。
いっぴきオオカミのようにぼうしをかぶり、赤い布をマントのように首に巻いて……かっこいい気分で出かけました!
ミミちゃんの風船を取ってあげようとしたり、池のそばでひっくり返っているカメキチくんを助けようとしたり……。
でも「いっぴき オオカミ」のようにかっこよくは行きません。
木から降りられなくなったとき、助けてくれたのはカンガルーのお兄さん。
池でおぼれそうになったら、ざぶーんと浮き上がってきて助けてくれたのはカバコちゃん。
「どうも ありがとう」とトミーが言うと、「いいってことよ」とかっこよく去っていきます。
本当はトミーが、いっぴきオオカミみたいに「いいってことよ」と言いたかったのですけどね。
でもちゃんとお礼を言うトミー、偉いです!
そして最後にはトミーだって、この決めぜりふを言うことができるんですよ。
「いいってことよ」ってね!
トミーのくるくる変わる表情が愛らしい。
「ありがとう」「いいってことよ」のやりとりがさわやかな読後感です。
作者のいしいひろしさんは、『かもめたくはいびん』でデビュー後、動物たちのユーモラスな表情、色鉛筆のタッチが印象あざやかな作品を、いくつも描かれています。
本作もまた、動物たちの生き生きした雰囲気に、幸せな気持ちになる1冊。
やさしい明るさがあふれる絵本をぜひ親子でお楽しみくださいね。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
続きを読む