かこさとしさんが遺した、ただひとつのクリスマス絵本が、可愛らしい真っ赤な新装丁で復刊です!
「ちきゅうの いちばんきたの はてを ほっきょくと いいます。
ほっきょくのまわりは、いちねんじゅう とてもさむくて、ゆきとこおりに おおわれています」
このように数々の名作科学絵本を描いてきたかこさんらしい、北極の解説からはじまりますが……。
続いて「その こおりのしたに、だれもしらない おおきな こうじょうが ありました」と、あっという間に、秘密の匂いのする、不思議なおはなしに入っていきます。
実は、北極には、白いコンテナに詰められて、世界中のいろいろなところからゴミやがらくた……例えば割れたコップ、壊れた机、穴のあいた靴やつぶれたお鍋などが送られてくること。
白いコンテナは北極では目立たないため、おそらく偵察衛星にも見つからないのだろうということ。
説明がいかにも具体的で「ありそう」で、ちょっとドキドキしてきます。
雪と氷の下の“秘密の工場”、そして“秘密のロケット基地”で、誰にも知られずにこっそりと、いったい何が行われているのか。
タイトルどおり、クリスマスにプレゼントを届けてくれる、あの“サンタさん”と関係ありそうなものですが……!?
とにかく、おはなしも絵もとってもチャーミング!
がらくたの品々はもちろん、誕生したおもちゃの数々に存在感があるのです。
実は最初に描かれたのが1980年代で、郷土玩具のような素朴なおもちゃもたくさん描かれていますが、それぞれの愛らしさが存分に表現され、かえって古今東西のおもちゃ箱をひっくり返したような普遍性が絵から感じられるのです。
そして南半球も北半球も、暑いところも寒いところも、子どもが大勢いる国や地域も……、世界中にサンタを待つ子どもたちがいることをさりげなく想像させてくれます。
かこさとしさんによって “サンタの秘密”が明かされた、この絵本。
びっくりしたり納得したり、みんなでわくわく、楽しめること間違いなしです。
子どもにはきっと、ずっと心に残る作品になりますよ。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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