「だれかが こっちに むかって はしってくる。
だれだ!」
「しょくぱんの かべに むかって はしっている。
とまらない とまらない。
このまま どーする」
「つっこんだー!!」
冒頭から3画面。ここまで読めば、誰もが釘づけまちがいなし。
ものすごいスピード、みなぎるパワー。
どこまでも一直線に走っていく、その名前は……
おおぐいタロー!!
……なんて紹介文を書きながら思わず実況中継風に叫んでしまいそう(笑)。
どこからともなくやってきたタローが巻き起こす、勢いのあるナンセンスストーリー。
第8回MOE創作絵本グランプリ受賞作で、そのスピード感と斬新さが審査員に絶賛されたという逸話も納得です。
2019年の受賞から待望の刊行となりました。
作者のマスダカルシさんは、2013 年から静岡新聞日曜版「週刊YOMOっと静岡」で新聞切り絵コーナーを担当。
2018年に『ぼく ここにいるよ』で絵本デビュー。
他にも新聞を素材にしたコラージュ作品を制作しているそう。
食パンに穴をあけ、ソーセージに食らいつき、トウモロコシの列を食べ切って……タローの食欲は止まりません。
周りでそれを見ていたり、タローに巻き込まれたりする生き物たちが表情豊かで、タローは淡々とした表情なのが笑えます。
オチまで走りつづける……と思ったら、あれ?っと笑える幕切れ。
3、4歳から小学生低学年くらいまで、幅広く人気の読み聞かせ絵本になりそうです。
ちなみにわが家の4歳の息子もお気に入り。
表紙を見るたび「おおぐいタロー、いっちょくせんー!!!」と芝居がかった声で楽しそうにどなっています。
そうそう、前の見開きには「タローはどんなこ?」の図解、後ろの見開きには、タローと同じものを順に食べてゴールを目指す迷路付きで、前後のお楽しみもばっちりですよ。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
続きを読む