子どもの頃、「だまし絵」にびっくりしたことありませんか? 有名な「ルビンの壺」は、白い盃のようにも見えるし、向かい合わせになった二人の人の顔にも見える。教科書に載っていた、帽子をかぶった若い女性のようにも見えるし、老婆にも見える絵にもびっくりしたものでした。一枚の絵に、まったく違ったものが隠れていて、しかも見る人によって、どちらの絵を見ているか違うなんて。
そんな子どもの頃の驚きを思い出させてくれたのがこの本です。本書を手にした瞬間「うわあ、これは絵本ならではの楽しさだ!」と、歓声をあげてしまいました。
青空がきれいな、あるさわやかな午後の日、人々は緑の草原を散歩しています。手回しオルガン弾きとサル。ふっくり旦那とほっそり奥さん、乳母と赤ちゃん、娘と兵士などたくさんの人々や動物にまじり、王様と女王様も……。
ところが空はみるみる暗くなり、つむじ風がびゅうびゅう。何もかもをひっくり返してしまうのです!!
なんともユニークなつくりの絵本です。一枚の絵をひっくり返すとまったく別の絵に見えます。さらにその一枚で二枚に見える絵をつなぐ物語がちゃんとあるのです。
ふっくり旦那の絵が、ひっくり返すとほっそり奥さんの絵に。悪い泥棒が、ひっくり返すと赤ちゃんに。農夫のおかみさんが、ひっくり返すとアヒルに。えっ、どうしてこうなるの!? と何度も見直してしまうくらい、一枚で二枚に見える絵の、それぞれのギャップに驚きます。
冒頭に出てきたたくさんの人や動物たちが、つむじ風に吹かれて、どこでどんな目にあっているのか、ぜひ探してみてください。
(光森優子 編集者・ライター)
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