トリックアート画家、ロブ・ゴンサルヴェスの描くだまし絵の絵本シリーズ、第四弾。
想像してごらん。
その世界では……
「ふんわりと地球の上をただよえば、空のかなたが見えてくる」
「岩山のような波を船はのりこえ、頂上めざし、のぼっていく」
「ひとりでいると、さそいこまれる。心に秘めた夢の場所に」
幻想と現実がゆるやかに混じり合う、イマジネーション豊かなだまし絵に、画家本人が詩を加えた本作。
「その世界では」のフレーズではじまるそれぞれの詩が添えられているのは、詩の内容をまさしく描き出した、まか不思議な世界です。
アインシュタインが見つめる先で、黒板は広大な宇宙のさなかへと変わり――
女性が見つめる窓の外の夜の景色には、いつのまにか、明るい空と、朝の山岳がそびえます。
まるで、その人の頭の中が漏れ出して、現実をなめらかに変容させてしまったような光景。
子どもたちの見ている世界は、あるいはこういうものかもしれない。
そんなふうに感じさせる、ロマンチックな景色でもあります。
また、別の世界では……
海中のおだやかな世界とそこで泳ぐ子どもたち。
そして、鳥の視点からながめる、緑豊かなとある島の海岸。
決してひとつの視界の中には収まらないはずのふたつの風景が、その世界では、なんの継ぎ目も違和感もなく、ひとつに溶け合っているのです。
どうしてこんな奇妙な世界がありえるだろう?
好奇心に導かれるまま、混じり合うふたちの世界で視線を行き来させていると――
遠近感がぐらり、ゆらぐ瞬間があります。
それが、躍動感、というのとも少しちがう、独特でダイナミックな動きを作品に生んでいるのです。
ゆらゆら、ゆらゆら、大きく穏やかな波にゆられるような、不思議な心地……
言葉ではいくら語っても、この魅力はなかなか伝えられない!
魅惑のだまし絵世界、ぜひ楽しんでみてください。
(堀井拓馬 小説家)
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