「おばあちゃん、ぼく、とまりに きたよ!」
出迎えたおばあちゃんは、黄色のコート、赤いブーツに赤いカバン。
帽子もメガネもコーディネートされていて、とってもおしゃれです。
大きな街に住むおばあちゃんのところへ遊びに来た男の子は、街が好きになれません。
人がたくさんいるし、大きな音がするし……。
不安そうな「ぼく」のために、おばあちゃんは一晩のうちに赤いマントを編んでくれます。
翌朝、マントをはおってみたら「ぼく」は勇気が湧いてきました!
「よーし、どんなところか、みてやるぞ。」
さあ、マントを羽織って、おばあちゃんといっしょに出かけた街は、人の多さも、大きな音も相変わらず。
でも、秋の公園で思い思いにくつろぐ人たちや、道ばたで演奏する人、踊る人……。
大きな街にだんだん「ぼく」は魅せられていきます。
おばあちゃんのさりげない心づかいが、不安で縮こまっていた男の子を、だんだんのびのびさせていきます。
子どもは、知らない場所へ行って、初めて自分の知らない世界があることに気づきます。
最初はおっかなびっくり。
でも大好きなおばあちゃんのマントが守ってくれるから、新しい場所もきっと大丈夫。
小さなきっかけで世界の見え方は変わるんですね。
本作品は2015年のコルデコット賞オナーブック。
くっきりと力強い線で描かれる人物や建物とは対照的に、背景の繊細な色づかいが魅力的です。
作者のローレン・カスティーヨは絵本に登場する“おばあちゃん”と同じく、都会に住み、時に赤いマントをはおりながらせっせと仕事をしているそうです。
同じくローレン・カスティーヨの描く『アルフィーのいえで』も、本書と同じく男の子の内面の成長が描かれ、あたたかい家族のようすが伝わってくる作品です。こちらもぜひ手にとってみてください。
にぎやかなことが好きで活動的なおばあちゃんと、そのお孫さんにおすすめしたい本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
続きを読む