南米ペルーのアンデス山脈の山奥深くにあるケロ村。そこでは、インカ帝国時代からほぼ変わらない、自給自足の生活をしています。この写真絵本は、苛酷な自然環境のもとでケロ村の人々が知恵を絞った暮らしをしている様子をレポートし、科学で自然をコントロールしようとするも決してうまくいっていない私たちに、多くの気づきを与えてくれます。
アンデス山脈の深い谷のなかにそそりたつマチュピチュ遺跡を作ったインカ帝国は、優れた石づくりの建物や道路、美しい織物や土器を生みだしました。かつてのインカ帝国時代の暮らしをいまも続けている村を探し、ケロ村にたどり着いた著者ですが、そこは皆が「野ウサギしか住まない」という荒地でした。村は富士山よりも500メートルも高い標高4300メートルのところにあり、岩だらけで急斜面に囲まれていました。このような厳しい環境でも、知恵と工夫で人々は立派に暮らしているのでした。家の作り方、食物の栽培、家族のあり方、大切な働き手としての子どもの役割、そして信仰。多くの迫力ある写真にぐっと心が動かされます。巻末にはイラスト入りの解説があり、ケロ村の暮らしがわかりやすくまとめられています。
著者は、「グレートジャーニー」で世界中を旅した探検家・関野吉晴氏。村の人々の暮らしに密着してはじめてわかったこと、撮影できた表情など、みどころが満載です。
<出版社リリースより補足>
■グレートジャーニー
700万年の昔、アフリカに誕生した人類が、400万年をかけて、ユーラシア大陸を通ってアメリカ大陸にまで拡散していった約5万3千キロの行程を、イギリス人の考古学者ブライアン・M.フェイガン(Brian M. Fagan)は「グレートジャーニー(The Great Journey)」と名づけました。
関野 吉晴の冒険旅行を全8回にわたり「グレートジャーニー」として、また日本人の足跡を追った冒険旅行を「新グレートジャーニー」としてフジテレビ系列で放送。現在、BSフジにて再放送中(BSフジホームページより)。また2013年3月から6月の予定で東京上野・国立科学博物館にて特別展として開催されます。
(金柿秀幸 絵本ナビ事務局長)
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