大きくてつりあがった金色の瞳。
見覚えがあるようで、でも初めて見る顔。
そう、表紙のこの子は「猫のダヤン」にそっくりなぬいぐるみなんです。
「ダヤン」のファンには、ちょっとびっくりするくらい可愛らしい雰囲気ですよね。
名前は「ベベダヤン」。明るいピンクの色がとっても似合っています。
べべはある日、こっそり家を抜け出して、庭の向こうの小さな家にいた、たくさんのおもちゃたちに出会います。
そこでは女の子のお人形が「わるい子がきて、私のドレスをやぶいちゃったの」と泣いています。
他のみんなも、ケガをするところだったと口々に言い立てます。
「そんなにわるい子がいるの?」
べべはちょっと怖くなります。ところが、本棚の下からはいだしてきた当のわるい子は…。
べべの無心の勇気と優しさが、みんなの心をとかし、世界を少し変えてくれます。
「ベベダヤン」は、「ダヤン」誕生30周年を記念して作者の池田あきこさんが生み出された新キャラクター。
ダヤンをよく知る読者は、「ベベの持ち主はリーマちゃんかな」「べべもダヤンの世界に旅することがあるのかな」
なんて、色々想像をめぐらしてしまいますが、この作品には詳しい説明も設定も登場しません。
ダヤンが初めて、小さな子どもが楽しめる絵本になったのです。
何も知らなくたって、べべの世界に入りこむことができるし、べべの勇気を感じることもできるのです。
そして、持ち主の女の子ってどんな子かな…って続きのお話を待つ子がいるかもしれません。
池田さんにとっても大きなチャレンジ。
そう思うと、この新しい世界のスタート。本当にワクワクします。
ベベダヤンを読んだ子が、いつかダヤンの絵本や物語の世界に入っていくこともあるのかな。
この愛らしいべべの物語、小さな新しい読者に贈ってみたくなりますね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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